TaNaBaTaより「アヤメクリスタル」

サークル名・TaNaBaTaより「アヤメクリスタル」、2016年第十三回博麗神社例大祭より配布

 

f:id:DPT3156:20170918215836p:plain

 

TaNaBaTaは結成から9年以上経つ老舗のバンド系同人サークルだ。

ボーカルは男性のあにー氏であり、男性ボーカルというものに抵抗を持っているという人も多いかもしれない

かつ、あにー氏は特徴的な甘ったるい声質なので他の男性ロック系バンドとも一線を画している

これによりあわない人にはとことんあわないおそれがあるが、ハマる人にはとことん魅了されるだろう

どこか妖艶さまで感じる中性的な歌声は、幻想少女というどこか性別を超えたキャラクター性を表現するには十分すぎるほどであり、

激しくノリが良いロックな音楽の中に触れたら消えてしまいそうな幻想的な儚さを調和させることに成功させている

 

TaNaBaTaの東方CDは10枚以上出ており、ベストアルバムのようなものもあるのでそこから入るのをオススメするのもいいが、そのベストアルバムに入っていない全曲新曲の「アヤメクリスタル」を聴けばこのバンドのアレンジがいかにテクニカルで進化し続けているかがわかるであろう

 

1曲目の「Strange Dance」はジャケットを飾る諏訪子の明日ハレの日、ケの昨日のアレンジであり、名前が示す通り軽快なダンスチューンだ。よくわからないがとにかく体を動かしたくなる感情を表現するような「君しか知らんその変なステップでダンス」のフレーズでがお気に入りであり、最初にテンションが上がるこの曲から入ることで一気にこのアルバムに引き込まれてしまう。

 

そこから流れるように2曲目はアルバムのタイトルにを飾っている少女秘封倶楽部のアレンジの「アヤメクリスタル」だ。この曲はTaNaBaTaの初の秘封曲のアレンジであり、TaNaBaTaと秘封の組み合わせなんて!と、このCDの配布前から興奮した者も少なくないであろう。直接的に秘封を表す単語は使われていないが、寒く白い白い冬の情景から春に舞う花びらを思う歌詞は原曲の少女秘封倶楽部が入る蓮台野夜行東方妖々夢のストーリーの連動を想起させるのに十分であり、いつか夢が覚めて二人が離れ離れになるのではないのかと怖くなり抱きしめる姿と秘封倶楽部の姿を重ねて胸がキュンキュンしてしまう。秘封を知らずに単体で聴いても切なくて良い曲だが、秘封病の秘封患者なら強くこう思うだろう、この曲は濃厚な秘封曲だと!もし二人離れ離れになっても、せめて舞う花びらに姿を変えてあなたを飾れるように…

 

まだアルバムは始まったばかり、3曲目は渡る者の途絶えた橋のアレンジのグリーンアイドガールだ。これまでとは打って変わってキャッチーでポップな電子音のイントロから始まるが、TaNaBaTaの音楽の色を失うことなくエモーショナルなロックギターと見事に調和しあっている。原曲の儚げな薄暗い雰囲気もしっかり残しつつ無駄のない流れるような楽曲の構成は見事の一言であり彼らの高い音楽的センスを感じるのだ。

 

4曲目はあなたの町の怪事件のアレンジのRing It。暗さも併せ持つ先程の曲と違い、底抜けに明るい軽快なナンバー。幻想少女の何気ないけれど楽しい日常の一コマを映しているようで非常にウキウキと楽しい気分になれる曲だ。

 

5曲目はヴアル魔法図書館とラクトガールをあわせたアレンジである「ウィッチ・ユー」だ。甘酸っぱい恋を描いたこの曲はまさしくTaNaBaTa!という感じの曲であり、9年前から今もずっと変わることのないTaNaBaTaの音楽の色を凝縮したようである。パチュリーはあにー氏のお気に入りのキャラであり、9年以上前、同じ原曲を使った別のアレンジからこのサークルは始まった。色んな音楽性を取り入れつつもずっと変わることのない甘い味を保ってて安心を感じさせる音色。そんなアレンジをパチュリーのアレンジできっちりやってくれるファンサービスがにくい。

 

さあラストの6曲目は魔術師メリーのアレンジの「HAKKA」である。原曲の魔術師メリーの不気味なイントロの空気をTaNaBaTaの音色で見事に表現したままそのままガツンとくるダークなメロディライン、そのバイブスに言葉を忘れる。TaNaBaTaのよくお菓子の名前を曲名につけ、それを個人的にお菓子シリーズと呼んでいる。飲んでいるコーヒーが甘くなるようなあにー氏の甘い歌声を表してるようで、お菓子はTaNaBaTaの音楽性をよく表現しているようで好きである。が、秘封曲に対してTaNaBaTaが当てはめたお菓子は「ハッカ味のキャンディ」なのであった。これをはじめて聴いたときはうわあああああそう来たかあああと強く衝撃を受けたのを覚えている。そうなんだよ…秘封は甘くないんだよ…ハッカ味なんだよ!うおおおおおお!これ以上は僕の稚拙な表現力では伝えきれないのでとにかくこの曲を聴いてくれ!

 

余談だが、このCDのジャケットを描いてるのは岸田教団のギターのはやぴ~氏である。諏訪子曲のStrange Danceはまさに表紙を飾れるキャッチーな名曲だが、やはりアヤメクリスタルのタイトルにもある通り、TaNaBaTaがはじめて挑戦した秘封アレンジを秘封患者の自分としては推していきたい。

・・・いや、このCDの曲はどの曲も全曲がA面張れる出来栄えだと思う。捨て曲なんて1曲たりともないぜ!

 

 

とまあ、比較的東方の世界線目線でこのCDの曲を解説したが、このアレンジCDは原曲のメロディラインをきちんと丁寧に綺麗に残しているので、東方音楽好きならば一回聴いただけで「ああ、あの曲のアレンジね」とわかりやすく、その点でも普段ボーカルアレンジを聴かないけど東方曲が好きな人にもオススメしやすいアレンジCDとなっている(原曲をバキバキに崩しまくったアレンジもまたそれはそれで好きだけれども)

 

しかしこのサークルの魅力は東方の世界観の再現に留まらないのだ

このサークルのテクニカルなところは、東方原曲のメロディラインを保ちながらもきっちりとアレンジをTaNaBaTaの色に染め上げているという点なのだ

TaNaBaTaはオリジナル曲も数多く作っておりそのどれも完成度高く、東方サークルとしてではなくロックバンドとして見ても素晴らしいサークルである

そしてTaNaBaTaの東方アレンジは、東方を全く知らない人がオリジナル曲として聴いても他のTaNaBaTaオリジナル曲となんら遜色ないTaNaBaTa曲としも成り立っているのだ

TaNaBaTaはTaNaBaTaとしてその甘く切ない世界観としても確立して成立させているゆえに東方に対して詳しくない、あるいは東方を全く知らないとしても、そのTaNaBaTaの音楽性に魅了され引き込まれてしまうのだ。そんなファンも少なくないであろう

(実際TaNaBaTaのライブ見に行ったら観客の半分以上が女性客だったので、こいつら絶対東方のファン層と違うだろと邪推しました(偏見))

 

東方ファンには東方アレンジとして好きになり、TaNaBaTaファンにはTaNaBaTaの曲として好きなり、両方好きな人は…もう堪らない至福の音楽となる

他のCDもどれも全て良いので、このCDを機にTaNaBaTaという素晴らしい存在を知ってみては如何だろうか